香港・韓国・ベトナムで聞いた「円の弱さ」と、うまい話が増える時代の歩き方
この8月、香港・韓国・ベトナムの3カ国を続けて訪れました。観光ではなく、現地に住む日本人や駐在員の方々と、お金について率直に話す機会をいただいた出張です。
日本の外から日本のお金を眺めると、景色はずいぶん変わります。今回は、現地で見聞きした一次情報と、帰り道にずっと考えていたことを書きます。
現地で「当たり前」に語られていたこと
印象的だったのは、どの国でも同じテーマが当たり前の前提として語られていたことです。
- あまりにも円が弱すぎる。円「だけ」を持ち続けることへの危機感
- ドル預金口座をどう開くか
- インフレに対応できる金融商品をどう選ぶか
- そもそも、どうやって外貨を稼ぐか
日本国内では「外貨はちょっと怖い」という声をまだ耳にしますが、海外で生活する日本人にとって、通貨の置き場所はとっくに「やるかやらないか」ではなく「どうやるか」の議題になっていました。
ちなみに、いま滞在しているベトナムでは、現地通貨ドン建ての定期預金金利が年7%弱という水準です(2026年8月時点・現地で見聞きした水準です)。ただし誤解のないように書き添えると、高金利の通貨には為替変動や現地インフレという裏面が必ずあります。金利の数字だけを見て飛びつくものではありません。ここで言いたいのは「ベトナムの預金がお得」ではなく、通貨によってお金の置かれている環境がこれほど違うという事実のほうです。
「外貨はリスク」という感覚を、一度点検してみる
外貨にリスクがあるのは事実です。為替は動きますし、手数料や税制の理解も必要です。
ただ、視点を変えるとこうも言えます。収入も、貯蓄も、将来の年金も、すべてが円建て――これは意識していなくても、いわば円への集中投資をしている状態です。外貨を持つことがリスクなのではなく、どの通貨に偏っているかを自覚しないままでいることがリスクなのだと、現地の方々との会話で改めて感じました。
だからといって「今すぐ外貨を買いましょう」という話ではありません。順序が大切です。
- まず生活防衛資金を円で確保する
- お金の使い道と時期を整理する
- そのうえで、通貨や商品の配分を考える
このあたりの考え方の順序は、NISAとiDeCoの使い分けの記事で書いたものと同じです。制度や商品から入るのではなく、目的から入る。通貨の分散も例外ではありません。
不安の時代に増える「うまい話」
一方で、今回の出張で改めて強く感じた懸念もあります。
景気や通貨への不安が広がる時代には、決まってポンジスキームの類やMLM(連鎖販売取引)が流行します。不安につけ込む「うまい話」は、いつも同じタイミングでやってくるのです。
誤解のないように書くと、MLM自体は違法ではありません。取り組むこと自体を否定するつもりもありません。ただ、冷静に問いたいのです。その仕組みで、現実に何人が稼げているのでしょうか。多くの場合、自分の本業や事業があってこそのものではないでしょうか。私の実感では、普通にビジネスに取り組んだほうがよほど堅実に稼げます。
そして現代の詐欺は、精巧です。怪しいメール一本ではなく、信頼している人からの紹介という信頼の延長線上でやってきます。ビジネス経験のある方でも、個人で情報の真偽を精査するのは簡単ではありません。
金融を扱う人間こそ、慎重であるべきだと思う
その中でも、私が最も問題だと本気で思っていることがあります。
それは、金融商品を扱う立場の人間が、仕組みを十分に検証しないまま「うまい話」を広めてしまうことです。金融の看板を掲げた人の言葉は、それだけで信用されてしまう。だからこそ、自分の報酬につながるかどうかで商品を語る――いわゆるポジショントークは、この仕事において最も慎むべきものだと考えています。
はっきり書いておきたいのは、保険も、海外の金融商品も、本来は扱い方によっては本当に良いものだということです。包丁と同じで、道具そのものに善悪はありません。扱う人の技術と倫理がすべてです。商品を悪者にするのでも、無条件に礼賛するのでもなく、仕組みを検証し、その人の目的に合うかどうかで判断する。それが金融に携わる人間の最低限の責任だと思っています。
「世直し」という言葉
少し個人的な話をします。
自分の仕事について内省を重ねていたとき、しっくりくる言葉に出会いました。「世直し」です。
私は救急救命士からファイナンシャルプランナーに転身しました。命を守る現場から、資産を守る現場へ。現場は変わっても、やっていることの本質は変わっていないと感じています。
コミッション目当ての営業。浅い知識で語られる金融。その被害に遭う方を、一人でも減らすこと。この観点で、これからもこの仕事に携わっていきます。
うまい話に出会ったら、契約の前に
もし「これは良さそうだ」という話に出会ったら、判断を急がせる話であるほど、一度立ち止まってみてください。
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